帰去来

さだまさし( 佐田雅志 ) 帰去来歌詞
1.多情仏心


2.線香花火

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

ひとつふたつみっつ流れ星が落ちる
そのたびきみは 胸の前で手を組む
よっついつつむっつ流れ星が消える
きみの願いは さっきからひとつ
きみは線香花火に 息をこらして
虫の音に消えそうな 小さな声で
いつ帰るのと きいた

あれがカシオペア こちらは白鳥座
ぽつりぽつりと 僕が指さす
きみはひととおり うなずくくせに
みつめているのは 僕の顔ばかり
きみは線香花火の 煙にむせたと
ことりと咳して 涙をぬぐって
送り火のあとは 静かねって

きみの浴衣の帯に ホタルが一匹とまる
露草模様を 信じたんだね
きみへの目かくしみたいに 両手でそっとつつむ
くすり指から するりと逃げる
きみの線香花火を 持つ手が震える

揺らしちゃ駄目だよいってるそばから
火玉がぽとりと落ちて ジュッ


3.異邦人

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

今更アルバムなんて 欲しくはないけれど
それがあなたの ひとつだけの 形見となれば別だわ
だからこうして ホラ この街を久し振りにたずねた
過ごしたアパルトマンは マロニエ通りの奥
洗濯物の万国旗や 雨晒しの自転車
タイムマシンで ホラ 戻った様に 何もかも或の日のまま

シミだらけの見慣れた壁をたどり
懐しい手摺をたどり
夢をたぐり 今日はひとり
確かめるのは 本当のおわり

狭いドアをあければ 涙を拭いもせず
あなたにすがる可愛い人 あなたの最後の人
そうよこうして ホラ 泣いてくれる人は他にもある
あなたのお友達は 私を見上げると
あからさまに顔曇らせて 黙って目を伏せる
私ひとりが ホラ 異邦人(エトランゼ) 何もかも或の日のまま

薄暗い階段を降りる
足元がかすかにうるむ
太陽が まぶしいから・・・・・


4.冗句


5.第三病棟


6.夕凪

作詞:さだまさし
作曲:渡辺俊幸

今は こうしてひざを抱えて 寄せては返す波の
想い出に身を任せて居よう
あの日 同じ水ぎわで君は 消えてゆく足跡が
悲しいと だから側に居てと言った
大きな貝ガラ 白い耳にあてて 又来る夏を占う
君の影が揺らいで落ちて 風が止まる
僕に見えないものが見えたね だから急に黙った
紅い夕陽が 君の涙に沈んだ

海猫たち もうお帰り 僕も砂を払おう
君の影が揺らいで消えて 夢が止まる
やがて ここにも風は戻って 陸(おか)から海へとまた
くり返す くり返す くり返す

海猫たち さあもうお帰り 僕も砂を払おう
僕の影が消える前に 消える前に


7.童話作家

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

私が童話作家になろうと思ったのは
あなたにさよならを 言われた日
もとより あなたの他には生き甲斐などないし
さりとてこの世をみつめる 勇気もなかったし
今迄二人が過ごしたあらすじを
想い出という消しゴムで消して
夢でもたべながら ひっそり暮らしてみよう
あなたの横顔を 思い出さずに済む様に

私が童話作家になって思うのは
本当を書くことの難しさ
だって 私自身がとても嘘つきで
涙をかくしては 笑って過ごしてる
原稿用紙に色鉛筆で 幸せの似顔 描いてはみるけど
悲しいくらいに 駄目な私の指先は
気がつけばいつでも あなたの笑顔を描いてる

私が童話作家になろうと思ったのは
あなたにさよならを 言われた日


8.転宅

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

親父が初めて負けて 大きな家を払った
指のささくれ抜くみたいに 後ろ向きで荷作りをした
いやな思い出は皆 残してゆきましょうと
床の間の掛軸丸め乍ら かあさんが言った
丁度かくれんばで 息ひそめて
鬼の過ぎるのを待つみたいで
何も無くなった部屋では
おばあちゃんが 畳ふいてた

それから移り住んだのは 学校の裏通り
そこで初めて家で過ごす 親父の背中を見た
ひとつ覚えているのは おばあちゅんが我が子に
負けたままじゃないだろうと 笑い乍ら言ったこと
人生は潮の満ち引き
来たかと思えば また逃げてゆく
失くしたかと思えばまた
いつの間にか戻る

そのあと我が家はも一度 家を替わることになる
一番喜ぶはずの人は 間に合わなかったけれど
人生は潮の満ち引き
来たかと思えば また逃げてゆく
失くしたかと思えばまた
いつの間にか戻る


9.絵はがき坂

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

あなたはためらいがちに 何度も言いあぐねて
どうしてそんなことああ 迷うのですか
ひとりで生きてゆける程 お互い大人じゃないし
それにしてもあなたの時計 ああ 進み過ぎました
カンナがもうすぐ咲くから
それまであなたが髪を 切らなければいいね
出来たら本当にいいね
活水あたりはまだ 絵はがきどおりの坂
つたやかづらの香り背に 学生達が通る
あなたの横顔越しに シャボン玉がいっせいに
弾じけた気がしたのは ああ 紫陽花ですか

同じ様にジーンズ着て アンアン・ノンノ抱えた
若いお嬢さん達が今シャッターを切った
活水あたりはまだ 絵はがきどおりの坂
僕も思い出欲しくてそっと 心でシャッター押した
絵はがき坂を 下りながらあなたは
やっぱり言いましたね
ああ さよならですか


10.指定券

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

もうこれまでねと 君は俯いて
左の頬だけで ひっそり笑った
北口改札を仔鹿の様に
鮮やかにすりぬけて出て行った

せめてもの お別れに 一度だけ 振り向いてくれたのに
丁度 今着いた 修学旅行の制服達が 君をかき消して
最後の声さえ 喰べてしまう

長いエスカレーター 昇って降りて
やっとの思いで 出した答
はじめる前から 終る旅もある
やはり野におけ れんげ草

せめてもの はなむけに 一度だけ手を振ってみせた
うしろ姿を つつむ紙吹雪 それは僕の ふるさとゆきの
季節はずれの 指定券


11.胡桃の日


12.多情仏心